日本耳鼻咽喉科学会香川県地方部会・香川県耳鼻咽喉科医会:香川みみ・はな・のど便利帳

人工内耳

 人工内耳とは蝸牛(内耳のきこえに関係した器官)の中に電極を埋め込み、蝸牛周囲の聴神経末端を電気刺激して聴覚を得る治療法で、臨床で普及し始めたのは多チャンネル型人工内耳が1982年にオーストラリアで開発されてからです。海外では人工内耳装置は3社から販売されており、現在、わが国では2社の装置が厚生省に認可されており、もう1社のものは認可申請中であります。わが国では1985年(昭和60年)に初めて使用され、その後、平成6年4月に保険適用が認められてから急速に増加してきており、現在では使用患者数は1500名に達しています。全国で60カ所以上の医療施設で手術が行われており、四国では各県の大学病院で行われています。香川医大では平成5年から人工内耳手術を行っており、最近は子供さんの症例が多くなってきています。

 人工内耳装置は体内に埋め込む電極部分と体外で使用する部分から成り立っています。直径1ミリ以下の電極を蝸牛の中に挿入し、耳の後ろの皮下に体外部分との信号のやりとりをするための装置を留置します。装置使用時には磁石で体外部分と接着させるようになっています。体外部分はマイク、スピーチプロセッサー(ことばを電気信号に変換する装置)から成り立っています。従来の装置では箱型のスピーチプロセッサーと耳掛け式のマイクを電線で結んで使用していましたが、最近ではスピーチプロセッサーの小型化が進み、スピーチプロセッサーとマイクが一体化した耳掛け型のものが登場し、使いやすくなってきています。ことばを電気信号に変換するプログラムもよくなってきており、すこしずつ、きこえ方がよくなってきています。

 身体障害者3級以上に認定されており、補聴器を使用してもほとんど会話が理解出来ない方が人工内耳の適応になります。人工内耳を使用している大人の約7割の方では静かな所での一対一の会話は少しゆっくり話してもらえれば分かるとの結果が出ています。約4割の方では聞き取りがむずかしい騒がしい所でも会話ができます。また、約3割の方で電話での会話がほぼ可能です。残りの方は人工内耳のみでは不充分で読話などの併用が必要になります。

 人工内耳手術を受ければ、すぐに聞こえるようになるわけではなく、手術後のリハビリが必要です。成人になってから聞こえなくなった方ではふつう、術後6カ月程度で言葉の聞き取り能力は向上し、安定しますが、聞こえなかった期間が長かった方では安定するまでもう少し、長くかかります。また、生まれつき聞こえない子供さんの場合は数年かけて、徐々に向上していきます。このため、特に子供さんにおいては長期間のリハビリが必要になり、難聴通園施設との密接な連携が不可欠です。

 身体障害者3級以上に認定されており補聴器を使用しても会話が困難な方は一度、耳鼻咽喉科専門医にご相談ください。

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