日本耳鼻咽喉科学会香川県地方部会・香川県耳鼻咽喉科医会:香川みみ・はな・のど便利帳

急性中耳炎

風邪をひいている時に耳が痛くなったら、急性中耳炎かもしれません。耳痛、発熱、耳漏が主な症状ですが、乳幼児に多い病気ですから、必ずこのような症状があるとも限りません。ねばねばして色が濃い鼻水が多いので耳鼻科を受診したら、急性中耳炎だったというようなこともしばしばです。


 
図1 図2

診断は症状と鼓膜を見ることで行います。(図1)は正常な鼓膜です。(図2)は急性中耳炎の鼓膜です。鼓膜の赤みや腫れ、耳漏などを見て重症度がわかります。鼓膜の奥が中耳という部屋です。そこは耳管という管で鼻の奥とつながっています。その耳管を通じて鼻の方から中耳に原因の菌やウイルスが波及して中耳に感染がおきます。
乳幼児の急性中耳炎が治りにくい、治っても反復するということがよく問題になっているのですが、治りにくい2大リスク要因は、「2歳未満児」と「保育園に通っていること」です。お母さんからもらった免疫が生後6か月位でなくなってしまい、2歳くらいまでは免疫力の弱い時代です。また保育園児は家庭保育の子どもに比べて抗生物質の効きにくい薬剤耐性菌を保有していることが多いのです。その他「母乳保育でないこと」、「おしゃぶりの使用」、「家族の喫煙」も中耳炎を治りにくくする要因となります。簡単に変えられないこともありますが、おしゃぶりの使用や家族の喫煙は是非子どもさんの中耳炎を治すためにも考え直して欲しいものです。



図3

治療は中耳炎が軽症であれば鼻の治療などだけで3日ほど様子をみます。必ず抗生物質が必要とは限りません。RSウイルス感染症や手足口病、突発性発疹などのウイルス感染に伴う中耳炎であれば、これらのウイルスを抑える薬はないので対症療法で経過をみます。インフルエンザに伴うものであれば、インフルエンザの治療をします。経過観察で軽快しない場合や、細菌感染が疑われる場合は、原因菌に効果のある抗生物質の内服が必要です。中耳炎が中等症以上である場合は、通常量より多めの抗生物質の投与や鼓膜切開を行って、中耳の膿汁の出口を作ることも推奨されています。できるだけ医師の選択した薬を日に3回なら3回に近い形できちんと内服することをお勧めします。ルーズな薬の内服では、効果も不十分となりがちです。熱が下がった、元気になったと症状に改善傾向があっても、中耳炎の治療を終了してよいとは限らないので、耳鼻科医がよいというまでは治療を継続されることをお勧めします。
中耳炎の反復が多い場合には、十全大補湯という漢方薬を用いたり、鼓膜切開の穴が閉じないようにする鼓膜換気チューブ留置(図3)を行ったりすることもあります。
将来の聞こえに問題を残さないためにも耳鼻咽喉科で相談してみてください。

ページトップへ ∧