声のかすれ
声がかすれてなかなかよくならない、という皆さん。煙草はよく吸いますか?カラオケが好きではないですか?仕事で声をよく使いませんか?そして声がかすれだしたのはいつからですか?
声は肺に吸い込まれた空気が声帯を通過する時に発生し、これが咽頭や鼻腔で共鳴して実際の発声が行われます。そのため、この通過点のどこに異常があっても声に影響を及ぼします。この中で声がかすれる場合に一番問題になるのが声帯です。
声がかすれる原因にはいろいろあります。一つは炎症によるもの、たとえば、風邪をひいた後や咽頭炎、喉頭炎などに伴う場合です。この場合は通常、炎症がひきさえすれば数日でかすれ声は治ってきます。ただし、のどの炎症がひどい場合にはまれに呼吸困難を生じてくることもありますので注意が必要です。
二つ目は声帯ポリープやポリープ様声帯、声帯結節といった声帯の良性疾患です。声帯にタコのような隆起ができたり、声帯全体がぼよぼよに腫れてきたもので、これらの疾患は喫煙や声の酷使と非常に関係があります。そのため、声をよく使うお坊さんや教師、歌手などに多くみられます。また声帯結節は大声をよく出す子供にも比較的よくみられます。基本的には声のかすれ(嗄声:させい)以外に症状はありませんが、ポリープ様声帯では程度がひどくなれば、やはり呼吸困難を伴ってくる場合があります。治療法としては、禁煙や声の安静(声を出すことを控える)、発声法の改善などの生活習慣が大切であり、消炎剤の内服や吸入治療を行います。これで改善しない場合には手術を行う必要があります。手術は全身麻酔をかけて、口の中から行うため皮膚に傷がつくといったことはありません。ただし、手術をして良くなったからといって、またプカプカ煙草を吸ったり、カラオケなどでガンガン歌ったりしてはいけません。生活習慣を改善しないと、また同じことの繰り返しになることが多いのです。
三つ目は喉頭の腫瘍です。ヘビースモーカーの人で、声がかすれていつまでも治らない、徐々にひどくなってきている、といった場合は要注意です。通常は痛みなどを伴うことは初期では殆どなく、声のかすれだけしか、症状がないために長い間放置されている人も多く、腫瘍が大きくなって痛みや息苦しさが出てきてから診察に来られ、‘もう少し早く診せてくれていたらなあ...’と思うことがあります。喉頭腫瘍は比較的治療が効果的で、初期であれば予後の良好な腫瘍です。‘もしかして?’と思ったら早めに声帯を診ることのできる耳鼻咽喉科を受診するようにして下さい。
その他にも声がかれる原因はたくさんあります。例えば、片側の声帯が動かなくなって息が漏れてしまうために声がかすれてしまう反回神経麻痺です。声が長く続かなかったり、水を飲んだ時にむせるといった症状もでてきます。この場合には原因に重篤な病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
いずれにしても‘たかが声がれ’と甘んじることなかれ。気になる時には一度あなたのノドを診せにきて下さい。