滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは鼓膜の内側の中耳に液体が貯まって聞こえが悪くなりますが、痛みや発熱を伴わない中耳炎です。乳幼児の半数以上が罹患することが知られており、大人でも罹患することがあります。大人では耳閉感、難聴、耳鳴を訴えることがありますが、子どもは何も症状を訴えないことも多く、痛みや熱もないので、なかなか気付かない場合があります。自然に治ることもありますが、難聴に気付かないままそれが長期間放置されてしまうと、言語発達に影響することがあります。また、滲出性中耳炎が長引いて重症化すると、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎という手術が必要な中耳炎になってしまうこともあります。
原因としては、鼻副鼻腔炎や先天性疾患、加齢変化によって、鼻と耳をつなぐ耳管というトンネルの働きが悪くなり、貯まった液体が排出されないことだと言われています。
診断はまず耳鼻咽喉科で鼓膜を観察することです。聴力検査や鼓膜の動きを測定することによって中耳炎や難聴の程度を確認します。図1では鼓膜を通して中耳の下の方に液体が貯まっているのがわかります。図2では鼓膜が奥にへこんでおり、その中に黄色い液体が透けて見えています。
図1
図2
治療は①難聴の程度が軽く、鼓膜の変化が軽い場合は自然治癒することが多いので注意深く経過をみるだけでかまいません②耳管の働きを悪くしている原因が明らかであればそれに対する治療を行います。子どもの滲出性中耳炎の多くは鼻副鼻腔炎を合併しており、まず薬や処置などで鼻副鼻腔炎の治療を行います。③鼻側から耳管を通して鼓膜の内側に空気を入れて、貯まった液体が抜けやすくする治療もあります。これらの治療で効果が見られない場合は④鼓膜に小さな穴を開けて貯まっている液体が抜けるようにする鼓膜切開術や鼓膜チューブ留置術があります。鼓膜チューブ留置術は長期間難聴が改善されうる有効な治療法ですが、鼓膜に穴が残るなどの後遺症もありうるため慎重に判断する必要があります。図3が鼓膜チューブ留置術を行った鼓膜です。チューブは数カ月から数年間入れておくことが望ましく、その間違和感や痛みはありませんが、自然に抜けてしまうこともあります。治療には時間がかかる場合も多いので、医師と相談しながら根気強く通院しましょう。
図3