日本耳鼻咽喉科学会香川県地方部会・香川県耳鼻咽喉科医会:香川みみ・はな・のど便利帳

顔面神経麻痺

ある朝起きると、片方の目が閉じられない、口から水がこぼれる、片方の顔のしわがなくなる等の症状が出現した場合は、顔面神経麻痺が疑われます。顔面神経は、顔の表情をつくる筋肉の調整以外に、涙や唾液の分泌、味覚、大きな音から耳を守るために鼓膜を動かす働きがあります。そのため、顔の一部が動きにくくなると同時に、目や口の乾き、味覚障害、音が響くなどの症状を伴うこともあります。

原因がはっきりしない場合をベル麻痺とよび約60%を占めます。麻痺とともに耳周囲に水疱が見られる場合はハント症候群とよばれ、成人では約15%を占めます。どちらも体内に潜在しているヘルペスウイルス属が原因であることがわかってきました。大部分の日本人はヘルペスウイルス属に既に感染しているといわれ、これが潜伏していて、疲労、かぜ、ストレス、寒冷暴露などを契機に活性化し神経炎を生じます。炎症性の神経の浮腫(むくみ)、また神経が細い骨の管を通っているため神経が締め付けられること、血流の低下といった悪循環が麻痺を増悪させます。糖尿病や高血圧、動脈硬化などの既往のある人に多いとされていますが、そういった基礎疾患がない若い人にも発症します。

顔面神経麻痺は自然に回復する場合もありますが、診断や治療が遅れた場合や重度の場合は後遺症が残ることがあります。治療は、炎症や浮腫を軽減させるステロイドの投与と、神経炎の原因となるウイルスに対する抗ウイルス薬の投与です。ステロイドは早期に投与するほど有効で、遅くとも浮腫がピークになる10日以内の投与開始が望ましいとされています。また、抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑制する薬剤のため、麻痺発症3日以内の投与開始が望ましいとされています。できるだけ早い時期に治療を開始することが大切ですから、顔面神経麻痺が疑われた場合は早期に耳鼻咽喉科を受診してください。

注意する点として、麻痺している側の額のしわが作る事ができる場合、麻痺と同時に手や足のしびれが出現するなどあれば、脳の血管障害(脳梗塞、脳卒中)が原因として考えられます。そういった症状がある場合は、脳神経外科や神経内科を受診ください。

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